妖怪退治の大太刀って。。。
祢々切丸とは? 日本最大級の大太刀に伝わる妖怪退治の伝説
日本刀には、鬼や妖怪を退治したという不思議な逸話が残る刀がいくつもあります。
その中でも、ちょっと変わった伝説を持つのが「祢々切丸(ねねきりまる)」です。
何が変わっているのかというと、人が刀を使って妖怪を退治したのではありません。
刀が自ら動き出して妖怪を追いかけ、斬った。
そんな伝説が残っているのです。
しかも祢々切丸は、伝説の中だけに登場する刀ではありません。
ばっちり実在の刀なんです。日光二荒山神社で実際に見ることができる、刃長216.7cmという日本最大級の大太刀です。
今回は、そんな祢々切丸にまつわる小話をご紹介します。
祢々切丸とは?
祢々切丸は、栃木県日光市の日光二荒山神社に伝わる大太刀です。
正式名称は、
「山金造波文蛭巻 大太刀中身無銘(号 祢々切丸太刀)」
といいます。
南北朝時代に作られたとされ、刀身には銘がありません。
大きさは、
・刃長 216.7cm ・反り 6.4cm ・元幅 5.6cm ・拵を含めた総長 337.0cm
という、とてつもないものです。
刃の部分だけで2メートルを超えています。
身長170cmの人と並べても、刀身だけで人間より長いことになります。
さらに拵まで含めると3メートルを超えます。
普通の日本刀を想像してからこの数字を見ると、もはや「同じ日本刀なの?」と思ってしまうほどの大きさですね。
祢々切丸は1967年(昭和42年)に国の重要文化財に指定されています。
祢々切丸は日本で一番長い日本刀?
これだけ大きいと、
「祢々切丸が日本で一番長い日本刀なの?」
と思いますよね。
祢々切丸は非常に巨大な大太刀ですが、「日本で一番長い日本刀」と断定するのは難しいようです。
日本には神社への奉納などを目的として作られた、さらに巨大な大太刀も残されています。
そのため祢々切丸については、
「日本最大級の大太刀」
と考えるのがよさそうです。
それでも刃長216.7cmという大きさは圧倒的です。
実際にこれを人が振り回して戦ったのか、それとも奉納など別の目的があったのか。
巨大な大太刀には、まだまだ興味深いところがあります。
「祢々切丸」という不思議な名前
では、なぜこの巨大な刀が「祢々切丸」と呼ばれているのでしょうか。
ここからが今回の小話です。
日光の鳴虫山には昔、「祢々(ねね)」と呼ばれる化け物がいたという伝説があります。
そしてあるとき、二荒山神社にあった大太刀が突然、自ら鞘から抜け出したといいます。
刀はそのまま祢々を追いかけていきました。
そして――
祢々を斬って退治してしまった。
そのことから、この大太刀が「祢々切丸」と呼ばれるようになったと伝えられています。
普通の妖怪退治の話なら、
「勇敢な武将が名刀を使って妖怪を倒した」
となりそうですよね。
ところが祢々切丸の場合は、
刀そのものが妖怪退治に出掛けてしまう。
ここが面白いところです。
日本刀には数多くの不思議な逸話がありますが、刀自身が動いて妖怪を斬ったというのは、なかなか強烈な伝説です。
妖怪「祢々」とは何者だった?
そうなると今度は、
「そもそも祢々って何?」
という疑問が出てきます。
ところが、この祢々については、はっきりしないことが多いようです。
祢々切丸の伝説では、日光の鳴虫山に棲んでいた怪物として登場します。
酒呑童子や土蜘蛛のように全国的に知られた妖怪とは違い、祢々切丸と結び付いた地域的な伝説の中に登場する怪異と考えた方がよさそうです。
つまり、
「巨大な大太刀は現存している。」
しかし、
「その刀が斬ったという『祢々』の正体はよく分からない。」
この組み合わせが、なんとも不思議です。
祢々切丸という名前はいつからある?
さらに調べてみると、もう一つ面白いことがあります。
栃木県立図書館では過去に、
「この大太刀が祢々切丸という号で呼ばれるようになった最初の史料は何か」
という調査が行われています。
ところが、調査した資料の範囲では、祢々切丸という名称の初出を特定することはできなかったそうです。
つまり、
「巨大な大太刀が現存している」
「祢々を斬ったという伝説がある」
「だから祢々切丸と呼ばれている」
ところまでは分かるものの、
いつからその名前と伝説が語られるようになったのかは、はっきりしない。
ということになります。
伝説というのは、こういう分からない部分が残っているからこそ面白いのかもしれませんね。
祢々切丸は現在も見ることができる?
祢々切丸は現在、日光二荒山神社が所蔵しています。
日光二荒山神社には、祢々切丸以外にも日本刀や武具などが伝わっています。
祢々切丸は中宮祠の宝物館で公開されることがありますが、展示状況については訪問前に公式情報を確認した方がよいでしょう。
写真で216.7cmと聞くのと、実際に3メートルを超える拵を目の前にするのでは、かなり印象が違いそうです。
日本刀が好きなら、一度は実物を見てみたい大太刀です。
日本刀には妖怪を斬った刀がほかにもある
実は、日本刀には祢々切丸以外にも鬼や妖怪を退治したという伝説を持つ刀があります。
有名なのが、源頼光が酒呑童子を斬ったと伝わる「童子切安綱」です。
ほかにも、土蜘蛛を斬ったことから「蜘蛛切」と呼ばれるようになったと伝わる刀などがあります。
ただし祢々切丸の場合は、
「持ち主が妖怪を斬った」のではなく「刀自身が妖怪を斬りに行った」
という点で、かなり変わった伝説ではないでしょうか。
妖怪を斬った日本刀について調べてみると、刀の名前そのものが妖怪退治の逸話から生まれているケースもあり、なかなか面白い世界が広がっています。
まとめ
祢々切丸は、日光二荒山神社に伝わる南北朝時代の大太刀です。
刃長は216.7cm、拵を含めた総長は337.0cmにもなり、日本最大級の大太刀の一つです。
そして「祢々切丸」という名前には、
刀が自ら鞘を抜け出し、鳴虫山にいた怪物「祢々」を追いかけて斬った
という不思議な伝説が残されています。
もちろん妖怪退治そのものは伝説です。
しかし、その伝説の主人公となった巨大な大太刀は、数百年を経た現在も実在しています。
実在する日本刀に、いつから語られているのか分からない妖怪退治の伝説が残っている。
こういう史実と伝説の境目にある話も、日本刀の面白さの一つなのかもしれません。
参考資料
・栃木県「とちぎの文化財」 「山金造波文蛭巻 大太刀中身無銘(号 祢々切丸太刀)」
・国立国会図書館 レファレンス協同データベース 「祢々切丸という号で呼ばれた初出史料について」

コメント